数学が苦手な人へ
数学が苦手な人へ
数学が苦手な人に、まずやってみてほしいことがあります。誰かに九九の問題をランダムに出してもらってください。
「7×8は?」「6×9は?」「8×7は?」
これが1秒以内に出てこないのであれば、はっきり言ってアウトです。特に確認してほしいのが7の段以降です。7・8・9の段になると、急に答えるまでに時間がかかったり、頭の中で九九を順番にたどってから答えたりする子がいます。
ここで少し危ないのが、「時間はかかったけど、最終的には答えられたから大丈夫」と思ってしまうことです。九九は、考えて答えを出せればいいというものではありません。少し考えないと出てこない時点で、まだ十分に定着していないと考えた方がいいです。
もちろん、九九だけで数学ができる、できないが決まるわけではありません。ただ、これまでいろいろな生徒を見てきましたが、九九が瞬時に出てこない子、特に7の段以降で少し考え込んでしまう子は、やはり数学を苦手にしていることが多いです。
では、なぜ九九がそこまで大事なのか。
昔から「読み・書き・計算」と言われます。数学では文章を理解する力も必要ですし、図形を考える力も必要です。ただ、その前に土台になるのが計算です。基本的な計算をするたびに頭を使っている状態では、その先の文章題や図形に十分集中できません。
逆に、計算がしっかり身についてくると、だんだん計算しているという感覚自体がなくなってきます。
例えば、自分の名前を聞かれたときに、「えーっと……何だったかな」と考える人はいませんよね。聞かれた瞬間に答えられるはずです。九九もそれと同じで、「7×8」と聞いた瞬間に56と出る。式を見た瞬間に答えが分かる。そこまで定着させておきたいところです。
さらに、計算が得意な人は、4×25=100や8×125=1000といった、よく出てくる数の組み合わせもすぐに出てきます。毎回一から計算しているわけではありません。何度も使っているうちに自然と頭に入り、考えなくても処理できるようになっています。
こうした、数をいちいち意識して考えなくても扱える状態を、某受験ドラマでも「数の暗黙知」という形で取り上げていました。簡単に言えば、数に慣れていて、考えなくてもすぐに出てくる状態です。


これができていないと、文章題でも困ります。例えば、せっかく問題文を正しく読んで式を作ることができたのに、その後の計算でミスをする。テストでは計算に時間がかかって時間切れになる。そんなこともあります。
授業中でも同じです。文章を読んで式の立て方を考えていたのに、途中の計算方法を考えているうちに時間がたち、「そもそも、なぜこの式にしたんだっけ?」となってしまうことがあります。図形でも、本来は図形の性質や考え方に集中したいのに、途中の計算ばかりに頭を使ってしまいます。
だから、基本的な計算は「できる」だけでは足りません。ほとんど考えなくてもできるところまで持っていくことが大事です。
大開塾でも、数学を見ていて「この子、ちょっと計算が怪しいな」と思った場合には、中学3年生であっても授業の最初に九九を言ってもらうことがあります。
「中3で九九?」と思うかもしれません。でも、できていないのであれば学年は関係ありません。特に7・8・9の段をランダムに出して、すぐに答えられるかを確認します。
最初は少し詰まっていた生徒でも、繰り返しているうちに少しずつスムーズになってきます。すると、今やっている中学校の単元も前より少し解きやすくなることがあります。
もちろん、九九を練習したから急に難しい問題が解けるようになったという話ではありません。計算に使っていた頭の負担が減って、本来考えるべきところに集中しやすくなったということです。
数学が苦手になると、「もっと難しい問題を解かないと」「応用問題をやらないと」と思いがちです。でも、その前に一度確認してみてください。
九九を聞かれて、すぐに答えられますか。特に7・8・9の段はどうでしょうか。
少し考えれば出るから大丈夫、ではありません。少し考えないと出てこないこと自体が、見直した方がいいサインです。
数学は積み重ねの教科です。今つまずいている単元に原因があるとは限りません。もっと前の、簡単に見えるところが原因になっていることもあります。
数学が苦手な人ほど、一度そこまで戻って確認してみてください。遠回りに見えて、実はその方が早いことがあります。



